人気ブログランキング | 話題のタグを見る

山本育夫毎日詩63 したい

行きつけの定食屋で
肉野菜炒めライスを
食べたとき
この肉
は死体、いや屍体の肉を
食べているのだ、動物の

思ってしまった


それ以来、
肉がたべられなくなった
男の話を
したい
わけではない

山本育夫毎日詩63 したい_d0057830_9293071.jpg

# by yamaiku1948 | 2008-11-06 09:29 | 山本育夫の毎日詩

山本育夫毎日詩62 居候

不意の来客がこころの底まで
降りてきた
秋の気配が
落ちている影に
びっしりと食らいつくような昼下がりのことだ
(迷惑なんだけどね
その男は
終日世間話をし、そのうち
身の上話をし、
そのうち、
実はと、

切りだした
(案の定だ

泊まっていきたいなあというから
いや、やぼ用があるのでというと
やぼ用とオレと
どっちが
みたいな顔をしたから
オレはやぼ用が
大事なんだよ
と目でものを言わせたが
その男は
ボクの目の物言いに気づかない顔をして
さっさと2階に上がってしまった
ボクの家にはないはずの2階に

それから20年
彼は2階から降りてこないまま
ボクの住居に居候している

山本育夫毎日詩62 居候_d0057830_1120302.jpg

# by yamaiku1948 | 2008-11-03 11:18 | 山本育夫の毎日詩

山本育夫毎日詩61 ここまで届く日

急激なそり
というものがある
そのエッジに写っている
白い道を
日傘を差したあなたが
歩いてくる

ゆるゆると
ゆるりゆるりと

そんな昭和が終わり、
速度をますます増した世界が
イレギュラーな展開を
たたきこんでくる

術もなく
極東の山間で男は
日傘のあなたが
ここまで届く日を
待っている

山本育夫毎日詩61 ここまで届く日_d0057830_9562799.jpg

# by yamaiku1948 | 2008-10-08 09:56 | 山本育夫の毎日詩

山本育夫毎日詩60 着信記録

ボクの年の数まで
「毎日詩」が生まれた
やれやれ
生きとし生くるものか

駅前通りの向こうから
三々五々
ひとびとが歩いてくる
(シルエットの中から浮かび上がるのは
 内側に潜んでいる
 黒いものたちの気配だ
ひとびと
は軽やかに通り過ぎて
よどみはない
それなのに

振り返ると
黒いものがぬっと
立ち上がって襲ってくる

三々五々の
昼下がり
ボクは携帯の着信記録を
懸命に削除している

山本育夫毎日詩60 着信記録_d0057830_6585365.jpg

# by yamaiku1948 | 2008-10-04 06:59 | 山本育夫の毎日詩

山本育夫毎日詩58 こころの分水嶺

山頂の縁、を歩いている人の
映像を見た
右と左にのぞいている深い谷
分水嶺
ということばを思い浮かべた
そういえば、日本の分水嶺を
尋ね歩いている男の人の話も
映像で見た
ここが分水嶺ですと断言し、
ペットボトルから水を地面に向かって
流した
ほらこちら側とこちら側に流れが分かれるでしょう?
だからここが分水嶺・・・

そんなふうに、わかればいいよね
ボクの人生の分水嶺が
ほら、ここが、分水嶺
あなたはこちら側にも
こちら側にもいけるよ
どうする?

そのどちらにもいかずに、
山頂をずっと歩いてく人の
映像が、こころに残った
染み入った

山本育夫毎日詩58 こころの分水嶺_d0057830_0291638.jpg

# by yamaiku1948 | 2008-09-23 00:29 | 山本育夫の毎日詩