行きつけの定食屋で
肉野菜炒めライスを
食べたとき
この肉
は死体、いや屍体の肉を
食べているのだ、動物の
と
思ってしまった
それ以来、
肉がたべられなくなった
男の話を
したい
わけではない
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by yamaiku1948
| 2008-11-06 09:29
| 山本育夫の毎日詩
不意の来客がこころの底まで
降りてきた
秋の気配が
落ちている影に
びっしりと食らいつくような昼下がりのことだ
(迷惑なんだけどね
その男は
終日世間話をし、そのうち
身の上話をし、
そのうち、
実はと、
切りだした
(案の定だ
泊まっていきたいなあというから
いや、やぼ用があるのでというと
やぼ用とオレと
どっちが
みたいな顔をしたから
オレはやぼ用が
大事なんだよ
と目でものを言わせたが
その男は
ボクの目の物言いに気づかない顔をして
さっさと2階に上がってしまった
ボクの家にはないはずの2階に
それから20年
彼は2階から降りてこないまま
ボクの住居に居候している
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by yamaiku1948
| 2008-11-03 11:18
| 山本育夫の毎日詩
急激なそり
というものがある
そのエッジに写っている
白い道を
日傘を差したあなたが
歩いてくる
ゆるゆると
ゆるりゆるりと
そんな昭和が終わり、
速度をますます増した世界が
イレギュラーな展開を
たたきこんでくる
術もなく
極東の山間で男は
日傘のあなたが
ここまで届く日を
待っている
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by yamaiku1948
| 2008-10-08 09:56
| 山本育夫の毎日詩
ボクの年の数まで
「毎日詩」が生まれた
やれやれ
生きとし生くるものか
駅前通りの向こうから
三々五々
ひとびとが歩いてくる
(シルエットの中から浮かび上がるのは
内側に潜んでいる
黒いものたちの気配だ
ひとびと
は軽やかに通り過ぎて
よどみはない
それなのに
振り返ると
黒いものがぬっと
立ち上がって襲ってくる
三々五々の
昼下がり
ボクは携帯の着信記録を
懸命に削除している
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by yamaiku1948
| 2008-10-04 06:59
| 山本育夫の毎日詩
山頂の縁、を歩いている人の
映像を見た
右と左にのぞいている深い谷
分水嶺
ということばを思い浮かべた
そういえば、日本の分水嶺を
尋ね歩いている男の人の話も
映像で見た
ここが分水嶺ですと断言し、
ペットボトルから水を地面に向かって
流した
ほらこちら側とこちら側に流れが分かれるでしょう?
だからここが分水嶺・・・
そんなふうに、わかればいいよね
ボクの人生の分水嶺が
ほら、ここが、分水嶺
あなたはこちら側にも
こちら側にもいけるよ
どうする?
そのどちらにもいかずに、
山頂をずっと歩いてく人の
映像が、こころに残った
染み入った
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by yamaiku1948
| 2008-09-23 00:29
| 山本育夫の毎日詩