顔のしわや
手のしみ
からだのたるみ
からだのにおい
ななめ向こう側から
大きなリフトがおりてきたので
その勢いで
放り出された
くしゃっと
そこら中で音がして
しわやしみやたるみやにおいが
駅からの道のりを
遠いと感じたことはなかった
その先で、あなたが
やわらかな夕餉などというものを
用意してくれていたから
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by yamaiku1948
| 2011-03-03 15:49
| 山本育夫の毎日詩
久しぶりに
久しぶりの声で
その人が、訪れてきた
はるばるときたんだね、
こころをいくたびもはしょって
からだも、また
そんなふうに後ろ姿で
いないで
いつまでも
若くはないのだから
このあたりで
決断
というものに身を任せようじゃないか
そのひとはいい
ボクはそのことばを
二度こころで発音してみた
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by yamaiku1948
| 2011-03-03 15:40
| 山本育夫の毎日詩
さきのさき
先の、その先、末端の
かそけきものたち・・・
そこにふれようとして
はるばる
この地まで来たのか、と
その人はいい、
そんなものはここにはない、
どこにもない、
そうやって探しつづけているうちはね、
と追い討ちをかけられた
遠い海辺のまちの海岸通りで
カラスがまっ黒にたむろしていた
そんなものは、どこにもない
そんなものは
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by yamaiku1948
| 2009-12-12 15:52
| 山本育夫の毎日詩
自分のことを
正確に判断することって
むずかしい
人のことはよく見えるのにね
(ヒントはここにある
ひとのことは、よく見えるんだ
だから他人事のように自分を見る
駅前通りの、一つ西側に
吉田のうどん屋があったのだけど
繁盛していたのに移転してしまい、
かわりにモツ屋さんが入った
勢いはあるのだろうか?
毎日、店の前を通りながら
様子をうかがう
勢いはある?
勢いなんて一時的なもの、
問題はそのあとです
勢いが消えた、そのあと
何を食べさせてくれるのか?
夏の終わりの積乱雲の下で
濃い影がつぶやくのだ
いやいや、食べさせてもらうのではなくって!
何を育てて食べるかだ、僕が
僕が!
そんなふうに
個人がとても大変な時代へのターン
きつくなるぞ
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by yamaiku1948
| 2009-08-28 11:35
| 山本育夫の毎日詩
夕暮れの駅の先端部分は
ひりひりとしている
ひとけもない
その場所に
腰を下ろし
通り過ぎる電車を、何両見送ったか
どの時代に、だれが積み重ねたのか
わからない石積みを
見ていたことがあった
少したじろぎ
少し安心した
痕跡さえ刻めば・・・
世界はまんざら捨てたもんじゃないぞ
大きな影が
駅舎をまたぎこして
いま
通り過ぎていった
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by yamaiku1948
| 2009-07-24 12:02
| 山本育夫の毎日詩