脳溢血け
といったら
ずいぶん古い言い方をするね
とその男はいい
いまは
脳出血、とか脳梗塞
とかいうんだよ
とただした
おれの場合は、脳出血
左半身が多少引きずるような気配を
漂わせている
よかったね
この程度で
作品はつくれる
その男の左手をにぎると
強く握り返してきた
あ、だいじょうぶ
だいじょうぶだ
とぼくはいい
あわただしく
さっき分れてきたところだ
男の
粘り着くような視線を
はねのけて
# by yamaiku1948 | 2012-03-11 14:36 | 山本育夫の毎日詩
おそろしいことをいおうか
とその男が後ろ向きでいうから
いわないで
と懇願した
ことばにしたら
ほんとうにいま
つま先から実現してしまうような
気がしたから
女は
遠い堤防の向こうに小さく
ひずんでいる空に
息を吹きかけながら
こうしてぼくらは
じょじょに
終っていったんだ
# by yamaiku1948 | 2012-03-11 14:18 | 山本育夫の毎日詩
暗く長いときの流れの先で
初めて生まれたばかりの
巨大なそれが
傾く
外堀の墓
と
男がいうから
そこにはなにか
埋まっているのかもしれない
おれは子を捨てて
タンポポの種を
ふっと
吹くように
はずれてしまった
# by yamaiku1948 | 2012-01-08 03:33 | 山本育夫の毎日詩
(大きな予感だね
(大きな大きな予感だ
2011年の秋口、
この国のただならぬ気配は
充ち満ちているのに
この凡庸な休日の昼下がりはどうだ
巷に放射性物質が満ちあふれている
ナウシカの季節だというのに
人びとは狂気にも陥らず
淡々と死に向かって生活をつづけている
いや、考えてみたら
原発事故があろうがなかろうが
確実に死に向かって生活をくりかえしていることに
変わりはないわけで
そんなことをいえば
# by yamaiku1948 | 2011-10-09 15:35 | 山本育夫の毎日詩
顔のしわや
手のしみ
からだのたるみ
からだのにおい
ななめ向こう側から
大きなリフトがおりてきたので
その勢いで
放り出された
くしゃっと
そこら中で音がして
しわやしみやたるみやにおいが
駅からの道のりを
遠いと感じたことはなかった
その先で、あなたが
やわらかな夕餉などというものを
用意してくれていたから
# by yamaiku1948 | 2011-03-03 15:49 | 山本育夫の毎日詩
久しぶりに
久しぶりの声で
その人が、訪れてきた
はるばるときたんだね、
こころをいくたびもはしょって
からだも、また
そんなふうに後ろ姿で
いないで
いつまでも
若くはないのだから
このあたりで
決断
というものに身を任せようじゃないか
そのひとはいい
ボクはそのことばを
二度こころで発音してみた
# by yamaiku1948 | 2011-03-03 15:40 | 山本育夫の毎日詩
さきのさき
先の、その先、末端の
かそけきものたち・・・
そこにふれようとして
はるばる
この地まで来たのか、と
その人はいい、
そんなものはここにはない、
どこにもない、
そうやって探しつづけているうちはね、
と追い討ちをかけられた
遠い海辺のまちの海岸通りで
カラスがまっ黒にたむろしていた
そんなものは、どこにもない
そんなものは
# by yamaiku1948 | 2009-12-12 15:52 | 山本育夫の毎日詩
自分のことを
正確に判断することって
むずかしい
人のことはよく見えるのにね
(ヒントはここにある
ひとのことは、よく見えるんだ
だから他人事のように自分を見る
駅前通りの、一つ西側に
吉田のうどん屋があったのだけど
繁盛していたのに移転してしまい、
かわりにモツ屋さんが入った
勢いはあるのだろうか?
毎日、店の前を通りながら
様子をうかがう
勢いはある?
勢いなんて一時的なもの、
問題はそのあとです
勢いが消えた、そのあと
何を食べさせてくれるのか?
夏の終わりの積乱雲の下で
濃い影がつぶやくのだ
いやいや、食べさせてもらうのではなくって!
何を育てて食べるかだ、僕が
僕が!
そんなふうに
個人がとても大変な時代へのターン
きつくなるぞ
# by yamaiku1948 | 2009-08-28 11:35 | 山本育夫の毎日詩
夕暮れの駅の先端部分は
ひりひりとしている
ひとけもない
その場所に
腰を下ろし
通り過ぎる電車を、何両見送ったか
どの時代に、だれが積み重ねたのか
わからない石積みを
見ていたことがあった
少したじろぎ
少し安心した
痕跡さえ刻めば・・・
世界はまんざら捨てたもんじゃないぞ
大きな影が
駅舎をまたぎこして
いま
通り過ぎていった
# by yamaiku1948 | 2009-07-24 12:02 | 山本育夫の毎日詩

何度目かの挨拶が終わり
ひとときのざわめきののち
三々五々
人々は人々のいた場所に
帰る
そういう場所を、みんなもっているのか?
もっているのだろう・・・
ひとりか、ふたりか、さんにん
こいつだけはと信じている
ひとが、いる場所
そう思える場所
だけど
もっていないひとだっている
もっているふりをしているだけの
ひとだっている
ほんとうは
ほんとーは
ぽつんと
ひとり
ひ、
と、
り、
なんだろうね
2009年の初夏
三々五々
みんな、どこかへ帰っていった
# by yamaiku1948 | 2009-07-12 12:21 | 山本育夫の毎日詩